最低賃金、大幅な引き上げ  ~日給制や月給制も確認が必要です~

 8月23日、厚労省は平成28年の地域別最低賃金の改定額をとりまとめ、発表しました。
 今後、都道府県労働局での手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月中旬までに順次発効される予定です。
 昨今、最低賃金は大幅な増額が続いているため、「最低賃金を参考に基本給や宿直者等の手当を定めている」場合や、「長年、初任給を引き上げていない」場合など、時給換算した場合に最低賃金を下回ってしまうおそれががあります。
 以下、具体的な額や使用者側の留意点をまとめました。

(1)最低賃金の引き上げ幅と引き上げ時期(首都圏)

 首都圏各都県の引き上げ幅は次の通りで、いずれも10月1日より発効予定です。

 ・東京都  932円(昨年から25円増)
 ・神奈川県 930円(同)
 ・埼玉県  845円(同)
 ・千葉県  842円(同)

 改定額の全国加重平均は823円で、昨年から25円上昇しており、上昇幅は最低賃金が時給のみで示されるようになった平成14年以降、最大となっています。
また最高額(東京都)と最低額(宮崎県等2県714円)の比率は76.6%となっており、2年連続でその幅は縮まっています。

(2)最低賃金制度とは?

 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
最低賃金額より低い賃金を合意の上で取り決めたとしても、法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
使用者が最低賃金に満たない賃金を支払った場合には、使用者は差額を支払う義務が生じます。
また最低賃金以上の賃金を支払わない使用者に対しては罰則(地域別最低賃金額未満のとき50万円以下の罰金、特定[産業別]最低賃金額未満のとき30万円以下の罰金)が定められています。

(3)2種類の最低賃金 どちらを適用する?

 最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業を対象にした「特定(産業別)最低賃金」があります。
特定(産業別)最低賃金は地域別最低賃金より高い額が定められており、特定の産業については、使用者は高いほうの額を支払わなければなりません。

(4)月給制、日給月給制の最低賃金は?

 月給制の場合は、月給額を月平均所定労働時間数で除して求めます。
日給制の場合は、日給額を1日の所定労働時間数で除して求めます。
時給制や日給制、月給制(手当など)の組み合わせの場合は、同様にそれぞれ計算し、合算して求めます。

(5)最低賃金との比較に含めない手当は?

 最低賃金と比較する際、計算に含めない賃金は次のとおりです。

 ①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
 ②1か月を超える期間毎に支払われる賃金
 ③所定労働時間を超える時間の勤務に支払われる賃金
 ④所定労働日以外の勤務に支払われる賃金
 ⑤午後10時から朝5時までの間の勤務に支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
 ⑥精勤手当、皆勤手当、通勤手当および家族手当

※割増賃金の算定基礎額から除外する手当とは一部異なります。ご注意ください。