「職場の熱中症」と法定健康診断  ~適切な実施と事後措置について~

厚生労働省によれば、平成24年度の職場での熱中症による死者は21名にのぼりました。また今夏の熱中症による救急搬送人員数は6月は前年の約2.37倍(4,265人)、7月1日~7日までは同約2.92倍(2,594人)と前年に比べ急増しています(消防庁発表)。

同省は熱中症による死傷病の多発を懸念しており、作業環境・作業そのもの・本人の健康状態の3つの観点に着目した「職場の熱中症予防対策」の的確な実施をもとめています。このうち、本人の健康状態については、下記の対策を挙げています。

①健康診断結果などからあらかじめ把握しておくこと

②熱中症の発症に影響を与える恐れのある「糖尿病」「高血圧症」「心疾患」「腎不全」などに注意すること

参考:暑さが本格化する前から職場での熱中症対策の徹底を!(厚労省) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/h25necchuushou.html

事業主が「健康診断を実施したか」「適切な措置をとったか」は、過労や職場のメンタルヘルスについて争いとなった事案でも、重要な争点となっています。  以下、事業主にもとめられる「法定健康診断」と「健診後の措置」についてまとめました。

 

法定の健康診断とは?

(1)種類と診断項目

事業主は、常時使用する従業員に対して「雇入時」と「毎年1回定期」に医師による健康診断を実施するよう義務付けられています。診断項目は一覧のとおりです(このほか、特定の業務に従事する場合など、6ヶ月に1回の健診や特殊な健診項目が定められている場合があります)。

(2)省略できる項目

定期健診については医師が認める場合省略できる項目があります。また雇入れ時の健康診断から1年間は、重複する項目は省略することができます。雇入時の健康診断については省略できる項目はありませんが、別途、医師の健診をうけて3ヶ月以内の人が証明書等を提出したときは、重複する項目は省略できます。

(3)費用負担

法定健診の費用は事業主が負担します。協会けんぽ等の実施する「生活習慣病予防健診」は上記の項目を含んでおり、例年、健診費用の一部が補助されています。

 

健康診断実施後にとるべき措置

事業主には下記の対応が義務付けられています(5.のみ「努力義務」となっています)。

1.健康診断の結果の記録

健康診断個人票を作成し、所定の期間(5年)保存する。

2.健康診断の結果について医師などから意見聴取

異常の所見のある労働者について、健康保持のために必要な措置について医師、歯科医師の意見を聞く。

3.健康診断実施後の措置

上記による意見を考慮し、必要があるときは作業の転換、時間短縮などの措置を講じる。

4.健康診断の結果の通知

診断結果は本人に通知する。

5.健康診断の結果に基づく保健指導

特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行なうよう努める。

6.健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告

常時50人以上の労働者を使用する事業所は、定期健診の結果を遅滞なく所轄の労基書長に報告する(特殊健診の結果報告書は実施したすべての事業所)。

参考:健康診断による健康管理を進めよう(東京労働局パンフレット)  http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/pamphlet_leaflet/anzen_eisei/_86108.html