マイナンバー制度の導入を前に  ~社会保険手続の本人確認事務の変更~

平成28年1月からマイナンバー(個人番号)制度が導入されます。この制度は社会保険や雇用保険、税などの手続きとも密接な関わりがあり、従業員のマイナンバーの管理など、経営への影響も想定されます。

今回はこの制度の導入を控えた社会保険事務手続きの変更と、マイナンバー制度の概要について、ご紹介します。

1.基礎年金番号への住民票コード収録

 日本年金機構ではマイナンバー制度の導入に先立ち、「基礎年金番号」に「住民票コード」を収録する取組みを進めています。住民票コードがマイナンバーを付番するベースとなるためです。
ただ、何らかの事情により収録が進んでいない事例もあることから、今後も取組みを継続していくとのことで、基礎年金番号に関しては、今秋から次のような取組みが始まっています。

(1)社保 資格取得時の本人確認事務の変更

 今年の10月から、「社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者資格取得手続き」の際、下記①②の両方にあてはまる人について、備考欄に住民票の住所を併記することになりました(住民票を添付する必要はありません)。

①基礎年金番号がないか、事業主が確認できない人
・20歳未満で厚生年金保険に加入歴がない人
 ・年金手帳を紛失し、番号が分からない人

②住民票上の住所以外に郵便物が届く住所がある人

 これまで、基礎年金番号が不明な場合、運転免許証や写真付き住基カードなど、所定の方法で本人確認をし、備考欄に確認した方法について記載することとされてきました。今後も本人確認は必要ですが、記載は省略できます。

 また、①②とも該当する方で基礎年金番号を持ったことのある人については「年金手帳再交付申請書」も同時に提出する必要があります。

 この届け出により、日本年金機構では「基礎年金番号がない人には住民票コードを紐付けた新たな基礎年金番号を付番」し、「基礎年金番号不明な方には住民票コードから本人と思われる基礎年金番号を特定し、案内する」としています。

 それでも特定できない場合には、提出した被保険者資格取得届が返される予定となっています。

 被保険者証の交付が遅れることのないよう、基礎年金番号の不明な人については、本人確認と住民票の住所の確認を徹底されることをお勧めします。

 

(2)被保険者の住所確認

 すでに被保険者となっている人で、住民票の住所と届け出た住所が異なる人などには、今年11月に日本年金機構から直接「住民票の住所(住民票コード)登録申出書」が郵送され、確認が進められるとのことです。ここで「宛所不在」となる等、確認できない人については、本人の在籍する事業所宛に確認の要請があるようです。

 

2.マイナンバー(個人番号)制度とは?

 マイナンバー制度では、住民票をもつすべての人に、1人1番号のマイナンバーを住所地の市町村長が指定します(原則として生涯変更されません。同時に法人にも法人番号が指定され、こちらはインターネット等で公開されます)。

 各自のマイナンバーは来年、平成27年10月以降、直接送付される「通知カード」で確認できるようになります。

 このマイナンバーは、雇用・年金・医療といった「社会保障」の他、「税」「災害対応」の3分野で各種の行政機関の持つ個人情報と紐付けられます。制度の導入により、行政の効率化や国民の利便性の向上といった効果が期待されています。

 反面、マイナンバーの漏洩や他人のマイナンバーを利用した成りすましでは大きな被害が予想されるため、厳正な本人確認や情報管理が求められており、マイナンバー法には厳しい罰則が定められています。

 個人情報の保護という主旨では、かつての個人情報保護法の施行時期が思い起こされます。

 今回は事業者にはより厳格な対応が求められるとのことで、実務を念頭において情報を収集し、備えておく必要がありそうです。

(塩澤)