今年10月1日施行予定の労働契約申込みなし制度

派遣労働者への労働契約申込みなし制度は、平成24年の改正労働者派遣法にもとづく制度で、今年平成27年10月1日に施行される予定です。制度の目的は、違法派遣の是正にあたって、派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定を図ること、とされています。

今回は、今年7月10日の厚生労働省の通達「労働契約申込みなし制度について(職発0710第4号)」をもとに、制度の内容をご紹介します。

 

(1)労働契約申込みなし制度とは

具体的には「派遣労働者の受け入れ先が一定の違法行為を行うと、その時点で派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込をしたものとみなす」という主旨の制度です。派遣労働者が承諾すれば、派遣先との間に直接の労働契約が成立することとなります。

ただし、法違反について善意無過失(知らなかったか、知らないことに過失がない)であったことが認められると対象外となります。

 

(2)違法行為の類型

労働契約申込みなし制度の適用対象となる違法行為の類型は次の4つです。

・ 派遣労働者を禁止業務に従事させること
・ 無許可事業主または無届出事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること
・ 期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること
・ いわゆる「偽装請負」等、労働者派遣法や労働基準法の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、必要とされる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること(いわゆる偽装請負等)

 

(3)申込を行ったとみなされる時点

派遣先が上記の違法行為を行った時点で労働契約の申込をしたとみなされます。
10月1日の施行日時点で上記の違法行為を行っている場合、この制度には特段の経過措置が設けられていないため、その時点で労働契約の申込をしたとみなされます。

 

(4)労働契約申込の内容

通達は、申込があったとみなされる労働契約の内容について、違法行為の時点の派遣元と派遣労働者との間の労働契約上の労働条件と同一の労働条件とし、労働契約上の労働条件でない事項は維持されないとしています。

 

(5)労働契約の成立の時点

労働契約の成立の時点は、この制度にもとづく申込について、派遣労働者が承諾の意思表示をした時点とされます。なお、派遣労働者が承諾できる申込は、最新のものに限られないとされています。
また派遣労働者が違法行為の前にあらかじめ「承諾しない」旨の意思表示をした場合、この意思表示に係る合意については公序良俗違反として無効と解されるとのことです。

このほか通達では「多重請負の形態でいわゆる偽装請負等の状態となっている」など「複数の事業主が関与するなどの複雑な案件」について考え方を整理しています。詳細はご相談ください。