有期雇用契約 複雑化する労務管理のポイント(雇い止め、明示義務、期間等の限度、無期転換制度など)

 いわゆる契約社員やパート、アルバイト、嘱託といった非常勤の雇用形態では、数ヶ月や1年間といった期間の定めのある雇用契約が一般的です。

 この期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)については、近年、法改正が相次ぎ、労務管理上、留意すべき点も増えてきています。

 今回はこの有期雇用契約について、留意すべき点をまとめました。

(1)注意すべき『雇い止め』の2類型

 有期雇用契約の場合に、雇用契約期間の満了により雇用契約を終了させることを「雇い止め」といいます。
従業員側保護の観点から、つぎの2種類の「雇い止め」は法的な規制の対象となっています。

イ.過去に反復して更新されたことがあって、雇い止めをすることが、正社員等の「解雇」と社会通念上、同一視できると認められるとき(実質的に期間の定めのない契約と同じ状態のとき

ロ.イの状態でなくとも、更新が繰りかえされるなど、従業員が更新を期待することに合理的な理由があると認められるとき

 判例では、の場合は正社員の解雇と同じく厳格な規制の対象となり、の場合は、客観的な「期待度」に応じて規制が緩和されています。
有期雇用契約の締結にあたっては、無用なトラブルのないよう、この点に充分留意する必要があります。

(2)契約時に書面で明らかにしなければならない項目

 有期雇用契約を締結する際には、企業側は「契約の期間」のほかに「更新の有無」と「更新する場合またはしない場合の判断基準」を明らかにしなければなりません。

これらの項目を書面に定めることで、企業側も従業員側も、更新への期待の度合いを客観的に判断することができます。
書面で明らかにする方法としては、雇用契約書に項目や条文を設ける以外に、就業規則等に規定しておく方法等が採られています。

トラブルを回避するためにも、有期雇用契約の契約形態の非常勤従業員を対象にした就業規則を作成したり、既存の非常勤向けの就業規則に新たに条文を追加されることをお勧めします。

ちなみに厚生労働省では雇用契約書の記載内容を次のように例示しています。

イ.更新の有無の明示の具体例

・自動更新
・更新しない
・更新する場合がありうる

ロ.更新の基準の明示の具体例

・契約期間満了時の業務量
・勤務成績、態度
・能力
・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況
・その他(     )

 これらはあくまでサンプルですので、より具体的な判断基準を列挙できれば、更新の期待の度合いも明確になり、トラブル回避に役立ちます。ぜひご検討ください。

 

(3)契約期間や更新の限度と雇い止めの事前通知

【有期雇用契約の期間】

 有期雇用契約の期間は、原則として最長3年間とされています。例外として高度の専門的知識等を有する者がその業務に就くときと従業員が満60歳以上のときは最長5年、一定の事業の完了に必要な期間を定めるときはその期間とされます。

【更新回数や通算年数の限度】

 更新回数の限度や通算年数には法的な規制はありません。あらかじめ更新回数の上限や、契約期間の通算年数の上限を定めておき、上限への到達により契約を終了とすることも可能です。
ただし(4)のとおり、同じ企業等との2以上の有期雇用契約の期間が通算して5年を超えると、従業員本人の申し出により無期雇用契約に転換する制度があります。
また、契約を1回以上更新し、かつ1年を超えて継続している有期雇用契約を更新する際には、契約の実態と従業員の希望に応じてできるかぎり契約期間を長くすることが求められています(努力義務)。

【雇い止めの事前通知】

 このほか次の場合の雇い止めには、あらかじめ更新のないことが明示されている場合をのぞき、期間満了30日前までの予告が必要です。ご留意ください。

イ.3回以上更新しているとき
ロ.更新や反復更新により継続する契約期間が通算1年を超えるとき
ハ.1年を超える契約期間のとき

 

(4)無期雇用転換制度と改正派遣法、助成金

【無期雇用転換制度】

 前の項目でも触れましたが、「同じ企業等との2以上の有期雇用契約の通算期間が5年を超えた従業員」が、「その契約期間中」に、期間満了日の翌日から始まる「無期雇用契約の締結を申し込んだとき、企業側はこの申し込みを承諾したものとみなす」制度が、平成25年4月1日から施行されています。
通算の対象となる有期雇用契約は、施行日の同平成25年4月以降、締結された有期雇用契約からとなっています。
無期雇用契約に転換した後の労働条件は、別段の定めがない限り、有期雇用契約のときと同条件です。

【無期雇用転換制度と改正派遣法】

 定年制の定めがない場合、就業規則に新たに正社員と同様の定年を設けるなど、中間的な契約形態として条件を事前に整備される企業も見受けられます。
労働者派遣法の改正により、有期雇用の派遣社員に新たに3年間の期間制限が設けられたこともあり、正社員または中間的な無期雇用契約への転換制度を制度化する対応も現実的といえます。

【キャリアアップ助成金】

 公的助成金では、キャリアアップ助成金に無期雇用や正規雇用への転換を助成するコースが用意されています。詳細はご相談ください。

(5)有期雇用契約の終了と雇用保険の取扱い

 有期雇用契約の雇用保険の被保険者が離職する際、期間満了退職であっても、雇用保険の手続き上、「解雇」や「自己都合退職」と同様の離職区分とされるケースがあります。

 これらの離職区分の違いは、離職者の失業手当の受給日数や待機期間に影響するほか、企業側の公的助成金の受給要件に影響することがあります。

 離職区分の判断基準は、「契約締結時の更新の明示の有無」のほか、「契約期間の上限規定の有無」「更新回数や雇用継続の年数」「本人の更新希望の有無」など、多岐にわたり、判断は事業所を管轄する公共職業安定所が行います。

詳細はご相談ください。

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