【労務コラム】政府の長時間労働抑制策の動向 ~残業時間の規制、勤務間インターバル等~

 政府の「働き方改革実現会議」では現在、長時間労働の抑制に向け、「残業の1年間の上限720時間(月平均60時間」)、繁忙期の残業時間の上限設定(80~100時間等調整中)」などを協議しています。

 政府はこれらの規制を罰則付きの法規制とする意向で、同会議に対し、3月末までの実行計画の取りまとめを求めています。

 残業時間の上限については、現在は『時間外、休日労働に関する労使協定(いわゆるサブロク協定)』で定めた上限時間まで可能となっています。

 この上限は厚労大臣告示により「月45時間、年間360時間」という限度基準内とされていますが、違反した場合の罰則はありません。

 また「特別条項」として、特別な事情がある場合、1年の半分を超えない範囲で、労使協定に定めた上限時間を超えた時間まで残業させることが可能で、こちらの上限は法規制がありません。

 この他、新技術等の研究開発や建設業、自動車運転業務等、一定の業務は限度基準の適用外とされています。

 対して、政府は残業について新たに罰則付きの法改正を検討しています。法改正の方向は、具体的には次のとおりです。

①労使協定で定められる残業時間の上限を月45時間かつ年間360時間とし、違反には例外を除いて罰則を適用する

②特別な事情で①の上限を超える場合、年間の上限は720時間(月平均60時間)以内とする。この場合についても、月あたり時間数などの上限を設ける。また特別な事情について事前に労使協定で定めることを必須とする

 同会議では、このほか「建設業等の例外扱いの可否」「業種別の猶予期間の導入」「勤務間インターバル規制」等について協議が続いています。

 このうち「勤務間インターバル規制」は各労働日の勤務と勤務の間に一定の休息時間を確保することを義務付ける制度です。例えばEUでは、24時間について連続11時間の休息を確保することとされています。

 中小企業では人手不足の深刻化や取引先との力関係といった事情から、長時間労働が深刻化しがちです。
個人的には、単なる厳罰化にとどまらない現実的、合理的な法改正が実現され、人材確保の力となるよう期待しています。

(塩澤)