衆院解散で先送りとなった働き方改革「罰則付の残業上限規制」「中小企業の月60時間超時間外労働に法定割増率引き上げ」案など

 9月15日、厚労省の労働政策審議会は「働き方改革」関連法案の要綱に対して「おおむね妥当」との答申を行っていました。

 この法案要綱には、「罰則付きの時間外労働の上限規制」「中小企業が猶予されている月60時間超の時間外労働の法定割増率の引き上げ」「年次有給休暇のうち年5日は使用者に時季指定義務を課す」といった内容が含まれていました。

 厚労省ではこの答申を受け、今秋の臨時国会に法案を提出する準備を進めていましたが、臨時国会冒頭での衆院解散が発表されたため、これらの法案の提出・審議は次期通常国会以降に先送りとなる見込みです。

 この法案要綱の内容は平成31年4月(中小企業の月60時間超の時間外労働の法定割増率引き上げは平成34年4月)となっており、中小企業にとっては猶予期間も短く、気になるところです。
以下、その一部をご紹介します。

 

(1)「罰則付きの残業上限規制案」とは?

 時間外労働の上限は「月45時間、年360時間を原則」とし、臨時的な特別な事情がある場合でも「年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)」を限度に設定するというものです。

 このうち「休日労働を含む単月100時間未満」「同じく複数月平均80時間」等の規制に違反した場合には、罰則を科す、という案でした。

 施行日は平成31年4月1日という案でしたが、審議が先送りとなったため、変更含みの様子です。

 ちなみに「自動車運転業務、建設事業、医師」等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外が想定されていました。また「研究開発業務」については、一定の健康確保措置を設けた上で適用外とする案でした。

 

(2)「中小企業の月60時間超の時間外労働への法定割増率引き上げ案」とは

 平成22年4月の法改正により、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率については、通常の賃金の50%以上(60時間以下は25%以上)とされています。

 同時に、中小企業については当分の間、引き上げを猶予することとされていました。

 今回の改正案要綱では、この猶予措置を廃止し、平成34年4月以降、中小企業の月60時間超の時間外労働についても、通常の賃金の50%以上の割増率を適用することとしていました。

 人員ひっ迫が予想される中、重要な制度改正案件でしたが、本件も衆院解散により先行き不透明となりました。