今年から来年(H29~30)の法制度改正関連のまとめ(上)

 今回は、今年から来年にかけての人事労務の法制度改正に関連するトピックスをまとめました。(特に中小規模事業場の実務に影響のある内容をピックアップしました。)

(1)定年後継続雇用の高齢社員を無期転換の例外とするための届け出

 平成30年4月から、労働契約法の「無期転換ルール」が適用されるようになります。

 これは「有期の雇用契約が同じ使用者のもとで通算5年超繰り返されたときに、労働者から申し出があれば期間の定めのない(無期)雇用契約に転換する」というものです。

 本人から申し出があれば、会社側は拒否することができません。

 ただし、定年後継続雇用されている高齢社員と、一定の高度専門職については、都道府県労働局長に届け出、認定を受けることで対象から外すことができます。

 来年4月から対象となる方については、「3月末まで」に認定を受ける必要があります。(所轄労働局に「雇用管理に関する措置」の計画と就業規則等を届け出ます。)

※ 全国的に申請が増えており、認定までに時間のかかることがあるようです。「年度内の申請」はお早めにご相談ください。

 (2)「労働時間の適正把握のためのガイドライン」H29年1月20日策定

 『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』は、昨年末の厚労省の『「過労死ゼロ」緊急対策』の一環として作成されました。

 従来の同様の趣旨の基準に、自己申告制の具体的な管理方法などを加えたものです。

 追加された主な内容はつぎのとおりです。

①労働時間の考え方

「労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下にある時間である」と明記されました。使用者の明らかな指示がなくとも「暗黙の指示」があれば労働時間とされるとしています。

 例として「会社等の指示により社内で仕事の準備や後始末をした時間」「会社の指示があればすぐに仕事をしなければならない手待ち時間」「参加を業務上義務付けられている研修等の時間」を挙げています。

②自己申告制の具体的な管理方法

 労働時間の管理方法は、原則として「会社等または担当者が直接勤務時間を記録する」か「タイムカード等の客観的な記録を基礎として確認して記録する」かどちらかの方法によることとしています。

 やむをえず自己申告制による場合は、つぎの措置を講じることとしています。

ア.自己申告を行う側、時間を管理する側の双方に新ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと

イ.「自己申告による労働時間数」と「パソコンの使用時間等から把握した在社時間」とが大きくかけ離れているときは実態を調査し、労働時間を補正すること

ウ.会社等は「自己申告できる時間数の上限を設ける」等、適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。

 さらに「時間外・休日労働に関する労使協定」で定めた「特別に延長できる時間数の上限」を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること。

③賃金台帳の適正な調製

 会社等は賃金台帳を作成する際、社員ごとに「労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数」といった事項を適正に記入することとしています。「賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合」等は30万円以下の罰金に処される旨も明記されています。

(下)に続きます。