今年から来年(H29~30年)の法制度改正関連のまとめ(下)

(上)から続きます。

(3)介護休業等の分割、育児休業の2歳までの延長等 それぞれH29年1月、10月に施行

(これらの法改正については、就業規則や労使協定の見直しが必要です。詳細はご相談ください。)

 まず1月から介護休業等について、次のように見直されました。

ア.介護休業の分割取得など

 対象家族1人につき「通算93日まで、3回を上限として分割して取得可能」とされました。
また同居・扶養でない「祖父母・兄弟姉妹・孫」も対象とされました。

イ.有期契約の従業員の取得条件の緩和

 休業開始時に「①継続雇用の期間が1年以上で、②休業開始から93日経過以降、6か月経過するまで契約が更新されないことが明らかでない」ときは介護休業を取得可能とされました。

ウ.介護休暇制度の見直し

 介護休暇は半日単位の取得が可能とされました。(対象家族1人=年5日、2人以上=年10日付与)

エ.介護短時間勤務などの見直し

 介護のための所定労働時間の短縮等の措置が、介護休業とは別に、利用開始から3年の間に2回以上、利用できる制度とされました。

 それぞれの措置の期間については、上記の範囲で1回の申し出期間の上限を会社等が定めて差し支えないとされています。

オ.介護のための所定外労働の免除 

 対象家族1名につき、介護終了まで利用可能とされました。本人が1回に申し出ることのできる期間は1ヶ月以上1年未満と定められており、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は請求を拒否することができます。また、継続雇用が過去1年未満の労働者等は、労使協定により対象から除外することができます。

また10月からは育児休業について、次のように見直されました。

カ.育児休業の2歳までの延長 

 原則1歳までの育児休業を6ヶ月延長しても保育所に入れない場合等に限り、さらに6ヶ月(2歳まで)の再延長が可能とされました。

キ.有期雇用契約の場合の育休取得要件の緩和

 有期雇用の労働者について、①過去1年以上継続雇用されていて、②1歳6ヶ月までの間に雇用契約がなくなっていることが明らかでない場合は育児休業を取得可能とされました。

 (4)雇用保険 65歳以降への適用拡大 H29年1月施行

 今年29年1月から、65歳以降に新たに雇用された人も「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となりました。

 昨年から勤務していた方で、65歳以降に雇用されたため雇用保険の対象外だった場合も、今年1月時点で高年齢被保険者となります。(被保険者資格取得手続きが必要です。)

 保険料は、平成31年度まで労使とも免除されます。

(5)老齢基礎年金、老齢厚生年金 10年で受給可能に H29年8月施行

 今年8月から、65歳到達時に、保険料納付済み期間と保険料免除期間が合計10年あれば、老齢基礎年金、老齢厚生年金を受給できるようになりました。

 ただし、受給の前提となる期間が短縮されただけで、老齢基礎年金の満額が支給されるわけではありません(40年で満額が受給できるため、10年では4分の1の額となります。)

 また遺族基礎年金、遺族厚生年金について、対象となる死亡した方の加入期間の基準は25年のままとされています。

今年はこのほか「短時間労働者への社会保険の適用拡大(4月:被保険者数常時500人以下の会社等も労使合意により対象に)」、「個人情報保護法の適用拡大(5月:保有する個人情報が5,000件以下の企業にも適用)」などの改正がありました。

衆議院選挙で中断した、「働き方改革」による労働基準法改正案などの長時間労働抑制政策(残業の上限規制など)の行方も気になるところです。

法改正に関連する社内ルールの見直し等、詳細は当事務所までご遠慮なくご相談ください。